はじめに

当院の治療方針

自然妊娠は、ひとつの卵子が排卵し精子と出会い受精、妊娠が成立します。私たちは、女性の妊娠する力を最大限に生かせるよう、より自然に近い状態で治療を行う事が最良の結果を生むと考えています。そのために、過剰な排卵誘発剤の使用や本来なら体内に存在しないホルモンであるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)製剤の使用は行いません。
卵子は卵巣内で原始卵胞から半年以上の時間を経て排卵に至ります。本来の卵子の成熟を乱すことなく、できるだけ薬を少量に抑え身体にやさしい独自の治療法でより良い治療成績を求めます。

治療のすすめ方

治療はその原因が分かればそれに対する治療を行いますが、原因不明の不妊症に対する標準的治療としては、自然に近い方法(一般不妊治療)から始めてより高次の治療法へと段階的にステップアップしていきます。しかし、年齢や不妊原因、患者様のご希望によって早めにもしくは一気にステップアップする場合もあります。

外来で行う主な検査

月経周期によってホルモンの状態や卵巣、子宮の状態は大きく変化するため女性側の検査は月経周期に沿って進めていく事となります。

月経期に行う検査

  • E2, LH, FSH, PRLなどのホルモン検査(採血)
  • 遺残卵胞の有無、前胞状卵胞数の計測(超音波エコー検査)

低温期(卵胞期)に行う検査

  • 子宮卵管造影検査(フェムビュー)※
  • 子宮通水検査※
  • E2, LH, P4,FSHホルモン検査(採血)
  • 卵胞発育の計測(超音波エコー検査)

排卵期に行う検査

  • E2, LH, P4,FSHホルモン検査(採血)
  • 卵胞発育、子宮内膜の厚さの計測(超音波エコー検査)

高温期(黄体期)に行う検査

  • E2,P4ホルモン検査
  • 排卵後の黄体の確認、子宮内膜の厚さの計測(超音波エコー検査)

その他の検査

  • 基礎体温の計測
  • 子宮頸がん検査※
  • クラミジア検査※
  • 甲状腺機能検査
  • 血液型(ABO,Rh型)
  • 感染症スクリーニング検査 ※
  • 抗ミュラー管ホルモン検査(AMH)※
  • 糖尿病スクリーニング検査※

男性因子の検査

  • 精液検査

※印は、以前の検査データご持参によって省くことが可能な検査です。場合によっては再検査が必要な場合もございます。また、検査費用は治療内容によって価格が変わります。詳しくはお問い合わせください。

検査の説明

基礎体温

基礎体温の測定は、卵巣の働きを知るための最も重要な手段です。朝起きて体を動かす前に婦人体温計で測定します。これを記録し、毎回来院する際に持参して頂きます。排卵の有無や排卵後の黄体機能を判定します。

超音波検査

経腟プローブという棒状の機械を腟内に挿入する経腟超音波断層装置で行います。子宮内膜の厚さ、卵胞の発育程度を正しく知ることができます。

子宮卵管造影検査(フェムビュー)

フェムビューを用いて、超音波検査下で卵管の通りを調べる検査です。
子宮の入り口からカテーテルを挿入し、生理食塩水及び空気の混合液を注入していきます。この混合液の流れ方を見て、卵管の走行や卵巣と卵管との位置関係などを調べるとても重要な基本検査です。

子宮通水検査

子宮の入り口からカテーテルを挿入し、生理食塩水を注入し子宮の内腔を充満させることによって子宮の内膜の状態、微小なポリープや粘膜下筋腫の有無などを調べる検査です。

各種ホルモン血液検査

FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)

脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンです。卵巣に働き、FSHは卵胞を育て、LHは排卵を起こし黄体を形成します。脳下垂体機能、卵巣機能を評価します。

E2:エストロゲン(卵胞ホルモン)

卵巣から分泌されるホルモンです。卵胞の発育や子宮内膜の増殖などを評価します。

P4:プロゲステロン(黄体ホルモン)

卵巣から分泌されるホルモンです。排卵の有無、黄体の働きが十分であるかを調べます。

プロラクチン(脳下垂体前葉ホルモン)

下垂体から分泌され、乳汁の分泌促進や妊娠維持などに作用するホルモンです。

TSH、T4、TgAb(甲状腺ホルモン)

甲状腺機能異常による無排卵や妊娠への影響が無いかを調べます。

クラミジア検査

抗体を調べる事でクラミジア菌がいるかを調べます。クラミジアは、卵管の癒着や閉塞を引き起こし、不妊原因の可能性となる感染症です。

精液検査

射精された精液中の精子の状態を見る検査です。2~5日間禁欲後、採精容器にマスターベーションにて採取していただきます。精液の量、1ml中の精子の数、運動率、奇形率を調べます。

当外来で行っている一般不妊治療について

タイミング療法

超音波やホルモン検査などで排卵日を推定し、性交日を指導する治療法です。特に排卵障害や排卵日が不安定な方に効果があります。

人工授精(AIH)

子宮内に調整した良好運動精子を直接注入する方法です。“人工”とついていますが、精子が子宮頚管部を近道できる以外はほとんどタイミング療法と変わりありません。目安としてタイミング療法を5~6回行います。残念ながら妊娠しない場合には人工授精となります。人工授精で妊娠できる方は5~6回までにほとんどが妊娠できるので、妊娠しない場合には、体外受精をお勧めすることになります。

不妊原因に対する外科的治療に関して

不妊原因と考えられる要素に対して手術療法が行われる場合があります。代表的な手術に、子宮内膜症や子宮筋腫に対する腹腔鏡手術、多嚢胞性卵巣症候群に対する卵巣多孔術、卵管閉塞に対する卵管鏡下卵管形成術などが挙げられますが、当院では行っておりませんので担当医が必要と判断した場合は手術可能な高次医療機関へ紹介させていただきます。

安全管理、不測の事態について

治療中の生殖医療に関わる全ての医療行為において厳重な体制をとっております。当院では治療中に取り扱う配偶子(精子や卵子)・胚(受精卵)の十分な管理体制を整え、ダブルチェックを行なっておりますが、より一層の管理体制の強化を図るために、最新の『取り違え防止システム:wish』を導入しました。人間の目による管理に、コンピューターのバーコードによる管理を加えたトリプルチェックによって、体外受精、顕微授精、胚移植の作業時における取り違いを決して起こさないように取り組んでいます。

しかしながら、地震や火災などで医療機器の破損や転倒などがあった場合、水害などで水没してしまった場合、突然の停電で電気の供給が止まってしまった場合、その他不測の事態による影響は回避できないことも有り得ることをご理解くださるようお願い致します。そのような事態が発生した場合は、医師が最善の対処を致します。処置内容などについては医師の判断にお任せください。

同意書の撤回について

同意書をいただいた後でも、同意を撤回することはできます。その場合は担当医とよくご相談ください。また、同意をしなくても、今後の当院での治療において不利益を受けることは一切ありません。

助成金制度について

当院は、北海道特定不妊治療費助成事業実施医療機関に指定されています。詳細は『北海道特定不妊治療費助成事業について』、『市町村の単独助成事業について』をお配りします。随時、説明いたしますので、お問い合わせください。

その他

児への影響などまだ解っていないこともありますが、その為にも我々は体外受精、顕微授精・胚移植の結果および妊娠成立後の妊娠経過を日本産科婦人科学会に報告する義務があります。したがって妊娠成立された場合、分娩終了後に妊娠経過を生殖医療科へ連絡していただきます。卒業の際に詳細について説明させて頂きます。なお、学会に報告する内容に患者様の氏名など個人情報を特定できるようなものは含まれておりません。
また、これとは別に当院では治療成績を関連する学会などや論文誌上に発表することがありますが、日本産科婦人科学会への報告と同様に患者様の氏名など個人情報を特定できるようなものは含まれておりません。その他、何かご不明な点やご質問があれば、遠慮なく生殖医療スタッフにお申し出ください。

カウンセリングについて

ご夫婦が最適の治療を選択することができるように、カウンセリングを行っていますので、担当医にご相談ください。